幕末

風雲児たち」は関が原から話を始めている。
倒幕へのエネルギーとして、
ひとつには関が原の恨み、
あとひとつに蘭学、というか世界情勢だな。
日本が開国するまえに、中国は
アヘン戦争で負けちゃうので、
当時、日本人が世界情勢を知ろうとすると、
出島のオランダ人から話を聞くか、
蘭書を読むかの2択。
現実問題としては、後者しかないといっていい。
そんなわけで、開国前夜、
アジア諸地域がヨーロッパ列強の植民地になっていることを
いち早く知ることができたのが、蘭学者だった。
ということです。
日本の周りを外国船がうろうろするようになると、
鎖国政策にも無理が生じてくるし、
各藩を弱体化させ続けてきた、幕藩制度そのものすら
国防上の弱点になってしまったのですね。
そんな幕末前夜の思想家を代表するのが崋山でしょう。
「鴃下或問」に
200年、戦のなかった国はあるか、とあります。
崋山が江戸参府のカピタンにたずねた質問です。
ヨーロッパにそんな平和な国は当然ありません。
オランダなど、国そのものが一時なくなっているくらいです。
平和なのは、すばらしいことですが、
兵器や兵法が進歩しないということでもあります。
崋山らはそのことに、危機感を感じたことと思われます。
とはいえ、かのナポレオンも「孫子」を手放さなかったと
言い伝えられ、
最近のなんとか戦争の折、アメリカ人が「孫子」を
やけに吹聴して、ずいぶん現代語訳が売れたようですが。
時代を超えて普遍であるというのは、すごいことだと。
しかしながら、その基本である
「敵を知り、己を知らば、百戦これ危うからず」
これを実行できた人がどんなに少なかったか、
幕末周辺を見るだけでも、つくづく実感します。