幕末の代官

「夢酔独言」にこんな話がある。
借地している地主が代官になろうと
就職活動をしていた。
小吉の兄たちが代官経験者なので
アドバイスをもらおうとやってきた。
それに答えて
「お代官になるには、まず始めに千両ほどいる。
それから貸家も色々壊れているから
その修理に2百両はいるし、
代官として勤務する皆さんの支度に百両、
現地勤務になると、引越しに百両以上はかかって、
2千両の借金ができる。
そのうえ、部下のたちが悪くて年貢の使い込みなどあると
不足分が自分の借金になるから、
どう倹約してつとめても、
借金を払い終わるのに30年はかかって
子や孫が迷惑する。
さらに支払いの目処が立たなければ
流刑やお家断絶もある」
などなど言うので、地主が腹を立てて
小吉を追い出した。
そこで、小吉は、代官になれば5年はもつまい、
自分の言が外れたら今生ではお目にかからぬ、
と言い放って去るが、
やんぬるかな、4年目に大きな暴動があって
解雇されたという。