切腹

切腹」という題の新書があった。
精神論、文化論にはほとんど触れず、
切腹の事例を淡々と挙げてあった。
そうして最後に、江戸武家社会の
とかげの尻尾切り体質について述べていた。

渡辺崋山は、切腹したのち、
腹にさらしを巻いて、喉を突いたという。
死体を保つため、わたが出ないよう
さらしを巻くのだと書いてあった。
川路聖謨は拳銃自殺と言われているが、
作法どおり腹を切ったのち
やはりさらしを巻いたとなにかに書いてあった。
たいへんな胆力だと思った。