親にネグレクトされた子供の傷は深い。

小学校のころ、たいていは学校から帰ると泣いていた。
担任に嫌われたからいじめられたのだと
後年、母は言った。
転校になって落ちこぼれたらかわいそうだから、と
熱心に勉強させていた。
帰ってはいつも泣いていたのは、かわいそうじゃないのだろうか。
学校だのその上だのに掛け合うような人じゃない。
だけど、ソツなく振舞う方法だとか
標的になることを避ける方法を工夫して
考えて、教えてくれてもよかったんじゃないか。
頭のいい、知恵のある人なのだから。
結局、解決せずに放置したせいで、
乗り越えることができず、今もまだ囚われている。
悪夢でうなされる定番のひとつだ。

父親である人は、なにも知らなかった。
だいたいは私が寝ている時間にしか家にいなかった。
ときどき酔っていると、眠っている私を起こして邪魔をする。
よほど嫌だったのだろう。
大人になると、父親が酔っているときは
傍によるのが気色悪くてかなわなかった。
なにやらセクハラされそうで、
「寄るな、触るな」と叫びたくなった。
これもまた悪夢でうなされるパターン。
同僚との付き合いもあって、夜に彼らを家に呼ぶこともあった。
麻雀をして、酒を飲んで馬鹿笑いして
うるさいことこの上なかった。
子供のころから寝つきが悪く、
8時には寝かされるものの、眠れるでもなく
布団の中で鬱々としていると、それが始まる。
父親であるはずのその人は、闖入者でしかなかった。
それでも、本人は今も自分は愛されている良い父だと
信じ込んでいる。
どうにもそれが許しがたい。

結婚したときに、両親からは断絶された。
いや、そうじゃなくても要所要所で
見捨てられてきたという思いが強い。
世の中を知っていれば、他に方法があった場面は
多くあった。