途中はぐだぐだだ!

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カララーン、扉にくくりつけられた鐘が鳴ると同時に
店員たちがいっせいに「いらっしゃいませ」と叫ぶ。
シレーナも教育モードから店員モードに切り替えた。
入ってきたパンデモスの男、いやオカマを見て少し気を緩めた。
「あっらー、シレーナ、久しぶりじゃなーい」
「そうね。今日は、クリスマスケーキの引き取り?
私、忙しいのよ。リジー、予約のケーキ出してあげて」
店員の一人に言いつけて、いったん途切れていた小言を再開した。
その間、エクアはショーケースのケーキを物色していた。
やはり、レランのケーキは違う。見た目も、味も。
暗使のテリトリーであるムトゥームにも
食品を売っている店はないわけではないが。
それでもわざわざ、いまいましいビスクの街を歩いて
シェル・レランの本店まで出向く。
だが、それは簡単なことではないのだ。
シレーナもそれが分かっている。
味の分かるグルメとして敬意を払っている。
そんなわけで、二人の間にはなにか友情のようなものが
なくは、ない。
エクアは予約したケーキを受け取り、
さらに注文を重ねていった。
当然、1箱では間に合わず、箱が増えていく。
「そんなに食べて、太るわよ」シレーナがくすりと笑った。
「み、みんなで食べるのよ、それにエクササイズしてるし」
本当にみんなで食べるのかどうか。
エクアを見送りながらやっぱりくすくすと笑ってしまう。
一方、エクアはビスクの街を歩いて通り抜ける。
大聖堂の方をちらと見て、偽善者どもめ、と小さく吐き捨てた。
アルターに乗って、墓地にたどり着き、
淀んだ臭気が心地よいとほっとしたつかの間、
銀行から出てきたもにこが目に留まった。
先日、獲得したばかりのシップ装備を得意げに纏っている。
「こっち来るんじゃねぇ」と祈るのも虚しく、
エクアを見るや一目散に駆けてきた。
「ギルドマスターおかえりなさいー」
「うわぁ、シェル・レランのケーキですかっ、これ!
すっごい、いっぱいー」なにやら嬉しげに言うのが憎らしい。
「そうよ、みんなで食べようと思って買ってきたのよ」
にこやかに「あとでいらっしゃい」と言いながら
エクアは内心、深い深いため息をついた。

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おわり。
2年ほど前になーんとなく考えてた、話。