降圧剤と抗がん剤

「降圧剤は人の寿命を延ばした唯一の薬だ」
薬理の教授が言っていた。
乳幼児の死亡率が下がり、
抗生物質により感染症による死亡率が下がり、
様々な薬によって、人類の寿命は延びたが、
そういう意味ではない。
一人の人の天寿という意味だ。
長く生きることは、必ずしもよいことではないが、
それでも、医療における大きな目標には違いない。

ガンに関する教科書に、抗がん剤の治験についてふれた章があった。
抗がん剤の治験は一般の治験とは少し、違う。
phase Iでその毒性をみて、投与量を決め、
phase IIでがん病巣の反応をみる。
そして、phase IIIでは5年生存率を追跡する。
おそらく、このphase IIIは市販後調査かと思う。
そこで効果がなければ認可が取り消しになるシステムだ。
ガンであることは苦しい。
けれども、抗がん剤の副作用も激しい場合がほとんどだ。
だから、長く生き延びられる、
それくらいのはっきりした効果がないと
患者にとって有益ではない、ということだろう。
がん患者が長く生きるというのは、
再発しない、という意味でもある。
それが5年生存率の意味なのだろう。

余命というものの、意義。